【鹿島ガーデンヴィラ】報道を機に悪質M&A対策が前進!?

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【鹿島ガーデンヴィラ】報道を機に悪質M&A対策が前進!?

 白河市の老舗結婚式場「鹿島ガーデンヴィラ」など全国で多発したM&Aと称する会社乗っ取り(詳細は本誌5、6月号を参照)を受け、国が動き出した。

 朝日新聞が5月に廣田彰人氏、嘉多山尚氏、税理士法人明清の神田卓志氏が関与した悪質M&Aを特集したが(朝日の記事中には実名は出ておらずイニシャル表記)、その被害企業で組織する「被害者の会」代表の荒川公一氏が中小企業庁のM&A支援機関登録事務局に廣田氏らの手法を情報提供したところ、「『中小M&Aガイドライン』に反する行為が行われていた場合は適切な対応をすることを検討したい」との返答が寄せられたのである。

 荒川氏が提供した情報は次の通り。

 ▽廣田らは企業を買収後、現金預金を社外に移動させ着服している。

 ▽企業を買収後も金融機関の負債を引き受けず、放置している。

 ▽結果、買収された企業は返済不能に陥り、倒産へとつながる。

 ▽その手法で買収された企業は全国で30社を超える。

 もはやM&Aではなく「詐欺」とも言える構造を解説した資料を送付すると、同事務局から次のような返答があった。

 「M&A支援機関登録制度は『中小M&Aガイドライン』の順守を要件とした者を登録する制度で、ガイドラインに反する行為がみられる場合は適切な対応を検討したい。例えばガイドラインではM&Aの仲介者に対し『両当事者間において利益が対立する事項を認識した場合はこの点に関する情報を各当事者に適時明示・開示すること』を求めている。もし情報提供の中にあった(被害企業)リストに記載の方で不適切と思われる仲介をされ、かつガイドラインに則った対応を希望される方がいたら、当事務局まで情報提供していただきたい」

 被害企業が30社以上に上っている時点で中小零細企業のM&Aに不備があるのは明らかだが、ガイドラインは適切なM&Aの進め方を示したもので、廣田氏らのような事件屋を処罰する規定はない。実際、荒川氏は同事務局から「(情報提供は受け付けるが)紛争処理や助言を目的とするものではないため、個別の事案に関しては警察や弁護士等に相談してほしい」と言われ、同事務局が言う「ガイドラインに則った対応」で悪質M&Aをどこまで排除できるかは今後の課題。ただ、一歩前進したことは間違いない。

 本誌記事を読んだ人からは、次のような被害を訴えるメールも寄せられている(読み易くするため内容を一部リライトしている)。

 《廣田氏については2022年、東京のゼネラルビジネスマシンという会社で求人募集があり、私を含め複数名が採用されました。入社後早くに違和感を覚え、一致団結して集団退職したため給与の遅配・未払いは免れましたが、余計な職歴が一つ増えてしまったことは残念です。私は廣田氏と面識はありません。社長であれば入社時に挨拶や紹介があるはずだが、社長の顔を知らないまま退職したのは初めてでした。在職中は怒号やパワハラでメンタルに不調が出ました。廣田氏によって様々な方が人生を狂わされたと思いますが、私も同じです》

 ゼネラルビジネスマシン㈱(大阪市、資本金2000万円)は磁気記録カードなど各種カードの印刷・製造・販売を手掛け、2022年から廣田氏が社長、前出・嘉多山氏が取締役に就いている。「被害者の会」の被害企業リストにもゼネラルビジネスマシンという社名が載っている。

 被害の全容を把握し、必要な対策行うと共に廣田氏らを処罰しなければ、M&Aをめぐる同様の事件はなくならないのではないか。


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 白河市の老舗結婚式場「鹿島ガーデンヴィラ」など全国で多発したM&Aと称する会社乗っ取り(詳細は本誌5、6月号を参照)を受け、国が動き出した。

 朝日新聞が5月に廣田彰人氏、嘉多山尚氏、税理士法人明清の神田卓志氏が関与した悪質M&Aを特集したが(朝日の記事中には実名は出ておらずイニシャル表記)、その被害企業で組織する「被害者の会」代表の荒川公一氏が中小企業庁のM&A支援機関登録事務局に廣田氏らの手法を情報提供したところ、「『中小M&Aガイドライン』に反する行為が行われていた場合は適切な対応をすることを検討したい」との返答が寄せられたのである。

 荒川氏が提供した情報は次の通り。

 ▽廣田らは企業を買収後、現金預金を社外に移動させ着服している。

 ▽企業を買収後も金融機関の負債を引き受けず、放置している。

 ▽結果、買収された企業は返済不能に陥り、倒産へとつながる。

 ▽その手法で買収された企業は全国で30社を超える。

 もはやM&Aではなく「詐欺」とも言える構造を解説した資料を送付すると、同事務局から次のような返答があった。

 「M&A支援機関登録制度は『中小M&Aガイドライン』の順守を要件とした者を登録する制度で、ガイドラインに反する行為がみられる場合は適切な対応を検討したい。例えばガイドラインではM&Aの仲介者に対し『両当事者間において利益が対立する事項を認識した場合はこの点に関する情報を各当事者に適時明示・開示すること』を求めている。もし情報提供の中にあった(被害企業)リストに記載の方で不適切と思われる仲介をされ、かつガイドラインに則った対応を希望される方がいたら、当事務局まで情報提供していただきたい」

 被害企業が30社以上に上っている時点で中小零細企業のM&Aに不備があるのは明らかだが、ガイドラインは適切なM&Aの進め方を示したもので、廣田氏らのような事件屋を処罰する規定はない。実際、荒川氏は同事務局から「(情報提供は受け付けるが)紛争処理や助言を目的とするものではないため、個別の事案に関しては警察や弁護士等に相談してほしい」と言われ、同事務局が言う「ガイドラインに則った対応」で悪質M&Aをどこまで排除できるかは今後の課題。ただ、一歩前進したことは間違いない。

 本誌記事を読んだ人からは、次のような被害を訴えるメールも寄せられている(読み易くするため内容を一部リライトしている)。

 《廣田氏については2022年、東京のゼネラルビジネスマシンという会社で求人募集があり、私を含め複数名が採用されました。入社後早くに違和感を覚え、一致団結して集団退職したため給与の遅配・未払いは免れましたが、余計な職歴が一つ増えてしまったことは残念です。私は廣田氏と面識はありません。社長であれば入社時に挨拶や紹介があるはずだが、社長の顔を知らないまま退職したのは初めてでした。在職中は怒号やパワハラでメンタルに不調が出ました。廣田氏によって様々な方が人生を狂わされたと思いますが、私も同じです》

 ゼネラルビジネスマシン㈱(大阪市、資本金2000万円)は磁気記録カードなど各種カードの印刷・製造・販売を手掛け、2022年から廣田氏が社長、前出・嘉多山氏が取締役に就いている。「被害者の会」の被害企業リストにもゼネラルビジネスマシンという社名が載っている。

 被害の全容を把握し、必要な対策行うと共に廣田氏らを処罰しなければ、M&Aをめぐる同様の事件はなくならないのではないか。

Resumir
白河市の結婚式場「鹿島ガーデンヴィラ」を含む全国の企業が悪質なM&Aの被害に遭い、国が対応を検討中。朝日新聞の特集を受け、被害者の会代表が情報提供した結果、中小企業庁はガイドライン違反の行為に対する適切な対応を検討する意向を示した。廣田氏らは企業を買収後、資金を着服し、負債を放置して倒産に追い込む手法を用いており、被害企業は30社以上に上る。